もう一つの居場所を子どもたちに。

子どもたちが自分で考えて、自由に遊ぶ「ものそとキッズクラブ」。津別で僻地の子どもを中心に集まり、かけがえのない時間をすごしています。農場の仕事をしながらキッズクラブを運営している河本玲奈さんに、そのユニークな活動と「ものそとキッズ」への思いを伺います。

年末のしめ縄づくり。

ものづくり、そとあそび。「ものそと」

 ものそとキッズクラブでは どんな活動を?

基本的には自由に遊んでいるんです。行事とか、どっか行こうとかはざっくり決めますけど。ふだんは決めないで、子どもたちに「何する?」みたいな感じですね。

しめ縄、どんな飾りにしようかな。

結構、今の子どもたちって 与えられないとできないところがあったりするので、今ある環境の中で 自分で遊びを見つけるみたいなものは大事にしています。自分で考えて遊ぶ。自分の手で物を作るだとか、外で体を使って遊んだりとか。

外あそび。子どもたちが撮影。

 「ものそと」の意味は何ですか?

子どもたち 「ものづくり! そとあそび!」

玲奈 「ものそと研究所」っていうイベントを河本農場で年に1回やっていたんですよね。農場の中で何か楽しいことをしたいなって。小麦のロールでアスレチックを作ったり、トラクターの試乗をさせてあげたりだとか。物を作るとか、そういう体験型のワークショップを1日がかりで。それが最初だったんです。3回目の時にはもうキッズクラブが立ち上がっていて・・・

集まって、兄弟みたいに遊べる空間があったら。

 キッズクラブを始められたきっかけは?

農家だと「どこでも遊べるでしょ」って思われるかもしれないんですけど、お隣って言っても離れてて 友達の家に自転車でも遊びに行けないみたいな。大型機械が通って結構危なかったりもしますし。で、やっぱり今の子どもたちは兄弟も少なくて、テレビゲームをして家にこもってしまう。そういうのを考えると、皆で集まって 兄弟みたいに遊べる空間がほしいなって思っていたんです。

閉所になった旧本岐保育所でキッズクラブがスタートした。

旭川の保育所時代に学童をやっている先生が近くにいて、その学童がすごく面白かったんです。だから、いつか学童をやってみたいという憧れもありました。

ノンノの森探検。子どもたちが撮影。

大きい子は小さい子の面倒をみて、小さい子は大きい子に憧れて。

 食事も子どもたちで作るんですか?

いつもはおやつを一緒に作るんです。買い物から子どもたちで行って、選んで買って来て、一緒に作って皆で食べます。昼は大体お弁当ですけど、時々 一緒に作って食べたりしますね。年に何回かのお泊まり会はすごい喜びます。全部、ご飯を作るのも自分たちで決めるので。4食分くらい子どもたちが考えて、決めて、買い物も自分たちでして。

みんなでおやつづくり。子どもたちが撮影。(現在は新型コロナの影響で見合わせています)

6年生が1年生に包丁の使い方を教えてあげたりとか。これなら簡単だから1、2年生できるねって見てあげたりだとか。大きい子が中心に どうやったら皆で楽しくいれるかなっていうのも考えてほしいんです。10人ぐらいだけどやっぱり集団なんで、みんながイヤな思いするとやっぱり楽しくないよねって。学年が上がってくると、分かることも増えてきて、いろんなことを 私よりもできるみたいなところも(笑)。

大人に頼られるのって、結構 嬉しいんですよね。

子どもたちも まぁ分かりますよね。大人が私しかいないので、受け身ではどうにもならない(笑)。で、私もすぐ子どもたちに相談しちゃうんですよ。子どもは大人に頼られるのが結構 嬉しいんです。私に何かかんか頼まれるのが、それも居場所の一つとして 自分の居場所はここにあるんだっていうような感じで。

しめ縄の縄をなうところから。

家でも学校でもない、もう一つの居場所。

今の子どもたち、皆 頑張っていますよ。習い事もいっぱいして。家ではきっと頑張ってやってると思うんです。学校はもちろん頑張ってるし。家は一番大事、学校も大事。でも、その他に何かもう一つ  ちょっと気が抜けるというか、そんなに頑張らなくてもいい場所も必要かなって。大人もそうですよね。

しめ縄完成! それぞれの かわいい飾りつけ。(子どもたちが撮影)

だから、あんまり無理して頑張りなさいとかは言わないんです。誰か何かできないことがあっても、それを笑いに変えるような感じで。ものそとに来たときぐらいいいよって。こんな時代になって 活動をどうしていくのかは悩んでいますけど。学校じゃなくて家じゃなくて、もう一つの変な場所。集まって、他愛のないことで笑い合える。そんな居場所を子どもたちに つくりたいという思いは変りません。

 

河本 玲奈さん

1977年 旭川出身。本格的なミュージカルに取り組める、拓殖大学北海道短期大学の保育学科へ入学。卒業後、保育士として就職し 保育の仕事が大好きになる。8年間 保育の仕事に携わり、結婚を機に津別へ。現在は河本農場を家族で経営。農場での年一回のイベント「ものそと研究所」の活動を経て、「ものそとキッズクラブ」を運営している。

ものそとキッズクラブ

定期会員制 週1回土曜日通年
詳細はHPへ (現在 新型コロナの影響で、活動内容等に変更があります)
河本農場・ものそと研究所

【取材・編集】小塚翔子(こつか しょうこ)
1983年生まれ、茨城県出身。富良野塾で脚本を学ぶ。
東京で舞台やラジオドラマの脚本、エッセイの連載等を手がける。
2020年に津別町の地域おこし協力隊に着任。
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