農業に吹く、新しい風。

津別町の農業共同法人「株式会社 希来里ファーム」。北海道の特色でもある 広大な畑作での原料生産だけではなく、珍しい西洋野菜の加工から直売までを自社で取り組むなど 津別の農業に新しい風を吹かせています。ハードルが高い農業のイメージを、より開かれたものへ。代表の中山さんから、希来里の描く 農業の未来を伺います。

希望と夢をもって未来を育む地域を目指す。希望が来るようにと名づけられた「希来里ファーム」

うちが先頭きって、「農家ってそんなに大変じゃないよ」ってやれればいい。

 希来里ファームとして法人化されて如何ですか?

昔は忙しい時は休めるものじゃなかったんですけど、今は人数がいるので。僕もちょっと病気を患って、春の一番忙しい時に1ヶ月くらい抜けたんです。農家って1ヶ月いないだけでも、春、植え付けができなかったら1年間もう何も仕事ができない。そこをちゃんと、どうにかこうにか回してもらって。会社になって違うなって思いましたね。

上里、美都地区 3戸の農家が集まる希来里ファームのメンバー

もっと農家じゃない人が抵抗なく農業っていう業種に就けるようになれれば。やっぱり普通の農家じゃない人が農業やるってすごいハードルが高いと思うんです。法人化することで、例えば社会保険入れますよとか当たり前の話をちゃんとできるようになるので。農家って大変だとか辛いとかってよく言われるんですけど、そういうのを払拭したいですね。うちが先頭きって、「農家ってそんなに大変じゃないよ」っていうふうにやれればいいなと思っています。

夏の大豆畑

基本、作物育てるのって、楽しいんです。

 農業のやりがいは何ですか?

春に植えて 秋に実ったときに、1年間の努力っていうのが全部そこに現れてくるので。基本、作物育てるのって楽しいんです。大変な時期もありますけど。春はね 秋の喜びに向けて頑張れますし、秋は秋で収穫して成果が見える。ほんとにやった成果がそのまんま形になるので、日々大きくなるのを楽しみに見てます。

健康食として注目を集めるもち麦の生産に挑戦。

商品化されたもち麦「つべつのとくべつ」 

「美味しい」の声がダイレクトに届く喜び。

鶴賀さん(リゾートホテル阿寒湖鶴賀ウィングス)に泊まった方が、うちの野菜を食べて美味しかったからって 次の日寄ってくれたりとか。中高生が研修に来て、野菜なんか食べなかった子が美味しいって言ってくれたり。以前は原料ばっかりだったので、野菜とか直接食べるものを作ってるとダイレクトに声が聞こえてくるので楽しいです。

希来里ファームはノンノの森ネイチャーセンターを中心とした畑の学校・畑ツアーの受け入れにも協力している。

ホテルや飲食店向けに珍しい西洋野菜の一次加工、直売をしているドリームファームプロジェクト。

スーパーで売っているような野菜はつくらない。

 野菜の加工と直売(ドリームファームプロジェクト)について教えてください。

元々野菜の直売をやられてた方がうちに入って、会社になって一緒にやろうということで 希来里ファームとして加工と直売のドリームファームプロジェクトが立ち上がりました。メインは西洋野菜です。珍しいものばかりなんですよ。基本スーパーで売っているようなものはつくらないっていうのがコンセプトで。需要はあったみたいなんですけど、中々 個人では こういうことに手をかけられない。今、この加工と販売につきっきりで、正社員が2人 専門でやっているので広げていけます。

カットされたカラーポテト。お客さんの注文に合わせ、一次加工している。

奥さんの中山美香さん。「作業中も他愛のない世間話で笑い合ったり、何でも楽しい方、楽しい方に向けるように」現場を気づかっている。

外から入る 新しい景色、新しい風。

 外から社員を雇って変ったことは?

和彦:僕もそうなんですけど、農家の息子ってスタートから農家の息子なんです。農家じゃない方は「ビート畑に行って」って言ったら、「ビートって何?」から始まるんですよね。僕にはそんな感覚なかったから。

美香:こっちの先入観っていうか、分かってると思ってしゃべってても。相手は知らないものだと思って接しないと。一から説明して納得したうえでやったほうが分かりやすいんだなって。

和彦:あ、こうやって順を追って話す方が分かりやすいなとか。「えっ、こうやったらいいんじゃない?」って言われて、もういっきに、「あ、そっちのほうがやり方いいね」っていうときもあります。どうしても引き継いだやり方をずっとやってっちゃうので。外から人が来ると、どんどん新しい景色も入ってきますし 新しい風が吹きます。

「天の川って見えるんだね」って言われて。

 津別の魅力は?

星がきれいだってみんなよく言いますね。「天の川って見えるんだね」って言われて。こっちって、当たり前に見えるもんなんです。ほんとに川のようになっているのが。小学生の時に理科の宿題で、夜 星座見つけてこいって先生に言われたんですけど星がありすぎて分かんないんですよ。「星がありすぎて、どれがなんだかよく分かんない」って言って(笑)。自然はね、やっぱりすごいですよね。

 

中山 和彦(なかやま かずひこ)さん

昭和51年 津別町出身。9年間 外の会社に勤めた後、実家の農家を継ぐ。平成24年に3戸の農家の共同法人で株式会社 希来里ファームを立ち上げ、現在 代表を務めている。

株式会社 希来里ファーム

北海道網走郡字上里156
株式会社 希来里ファーム Facebook
ドリームファームプロジェクト Facebook

【取材・編集】小塚翔子(こつか しょうこ)
1983年生まれ、茨城県出身。富良野塾で脚本を学ぶ。
東京で舞台やラジオドラマの脚本、エッセイの連載等を手がける。
2020年に津別町の地域おこし協力隊に着任。
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