自然の中の驚きと感動を伝えたい。

津別町にあるノンノの森ネイチャーセンターで自然ガイドをしている吉井晴紀さん。子どもの頃からの思いを叶える仕事と出会い、地域おこし協力隊としてガイドの道を歩み始めました。吉井さんがノンノの森に巡り会うまでのストーリーと自然ガイドという仕事の醍醐味を伺いました。

木育のイベント「森の香りづくり」を撮影しました。

5年たっても変らなかった思い。

 自然ガイドを目指されたきっかけは?

中学生のころから、好きなことを仕事にしたいなっていうのと自然の中で働きたいっていう思いがあったんですけど、当時はその条件をクリアできる仕事っていうのが全く見つからなくて。それで高校生の時に自衛官を目指そうと思ったんです。自衛隊だったら野外で働けますし、親元を離れて自立したかったり色んな理由で。当時はずっと自衛隊でとは考えていなかったと思います。ただ、中途半端に入って辞めるのはなんか負けた気がするので、短くても5年ぐらいはいようと思っていたんですよね。

清流のせせらぎに癒される、北海道唯一の森林セラピー®基地「ノンノの森」

それこそ入隊して5年ぐらいたってから、お金もそこそこ貯まってきたので改めて自分のやりたいことが何かって考えた時に、その自分の好きなことを仕事にしたいという思いと、やっぱり自然の中で働きたいっていう思いが5年たっても変わらなかったんです。そして誰かのためにという3つの芯になる思いがあって、その中で仕事する職業があるのかなって色々調べてみました。

7年間の自衛隊勤務を経て、ガイドを目指すため北海道の専門学校で勉強した吉井さん。

そんな時に山岳ガイドという仕事を知りました。ガイドさんって僕の勝手なイメージで公園の草花を一緒に見ながら歩くみたいなイメージしかなかったので。山を一緒に登るようなガイドだったら体力も自衛隊で鍛えてきたし、自然の中だし。僕のやりたいような部分でもあったので、最初は山岳ガイドを目指していこうと思って専門学校に入りました。

木育のイベント「森の香りづくり」葉の感触からトドマツとエゾマツの違いを感じる。

気づかせてもらった自然の中の驚きと感動

 自然ガイドを目指されたのは?

専門学校では知識も勉強になったんですけど、一番は人との出会いっていうのがすごく良かったんです。鳥類の授業では実際にガイドをしている専門の先生から鳥を見る楽しさを教わって。こんなに鳥の種類ってあるんだな、面白い行動をしているんだなってどんどん興味が湧いて、それで鳥が好きになったり。あと、植物を教えてくれる先生が、なんでここに咲いているんだろうとか、植物の面白い生態を色んな角度で教えてくれて。そういう先生たちと出会ったことで、ただ草花を見るだけのガイドっていうイメージががらっと変ったんです。色んな人たちを、鳥だったり植物、自然を使って楽しませる。その中の驚きや感動を伝える自然ガイドっていう職業があるんだって知りました。気づかせてもらった自然の中の驚きや感動を、僕も伝えていきたいと思って自然ガイドを目指す方へ進みました。

クリンソウが群生するノンノの森では、6月ごろ花が一斉に咲きほこり見頃となる。

人とのつながりから、今がある。

ノンノの森との出会いは?

専門学校1年生の時に野外災害救急法のコースを紹介されて、それがたまたまノンノの森ネイチャーセンターを運営する森のこだまの主催だったんです。その後、学校の行事でたまたま代表の上野さんと話す機会があって、それから何回かお会いしてインターンシップで働かせてもらいました。仕事の雰囲気も良かったですし、自分のやりたいことにもマッチしていたので、去年から地域おこし協力隊としてここで働いています。色んな巡り合わせで自然ガイドという仕事にたどりつけたので、ほんとにすごい出会いって大事だなと思います。

津別峠に近い上里という地域にあるノンノの森ネイチャーセンター

ノンノの森を望むネイチャーセンター内のカフェ

 

お客さんと楽しめる空間づくり。

 実際にガイドを始めて如何ですか?

知識も もちろん必要なんですけど、お客さんと楽しめる空間づくり、そういったコミュニケーション能力も大切だなって感じました。やっぱりガイドが終わったときに「ありがとう!」って言ってくれるのがすごく嬉しいのと、もっと喜んでもらえるためにはどうしたらいいのかなって考えるのがやりがいです。実際にガイドをして現実味がでてきて、この仕事でやっていきたいって ようやく形が見えてきたから、今はすごく毎日が楽しいですね。

木育のイベント「森の香りづくり」子どもたちに「ヨッシー」と親しまれている吉井さん

木育のイベント「森の香りづくり」蒸留機に刻んだ松の葉をセット

毎日が全く違う景色。

 自然ガイドの仕事の面白さは?

観光地って1回だけとか、年に数回しか行かないと思うんですけど、それが毎日行くようになると同じ場所なのに毎日が全然違う景色なんです。例えば雲海ツアーをやっている時、ほぼ毎日津別峠まで行って展望台から見ていると、太陽の出る方角が少しずつ変っていったりだとか、雲海の流れる向きが逆だったりとかする時もあって。それってやっぱり毎日行かないと気づけない自然の動きというか。そういうのがこの仕事をやっていてすごく面白いです。

津別峠の雲海。ノンノの森ネイチャーセンターでは雲海ツアーも行っている。

そういった世界が見られているのもここで働いているからで、森のこだまと出会わなければ津別という町も僕は知らなかったですし、ほんとに人のつながりから今があるんだなっていうのをすごく実感しています。

木育のイベント「森の香りづくり」子どもたちの手に届いた森の香りのしずく

吉井 晴紀(よしい はるき)さん

1993年生まれ 弟子屈町出身。自衛隊勤務後、当時 自然調査・アウトドアガイド専攻があった北海道エコ動物自然専門学校に入学。卒業後、津別町地域おこし協力隊としてNPO法人森のこだま・ノンノの森ネイチャーセンターで自然ガイドに取り組んでいる。

ノンノの森ネイチャーセンター

NPO法人 森のこだま

【取材・編集】小塚翔子(こつか しょうこ)

1983年生まれ、茨城県出身。富良野塾で脚本を学ぶ。
東京で脚本、エッセイの連載等を手がける。
2020年に津別町の地域おこし協力隊に着任。
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