仲間とともに、津別農業の未来を描く

津別農業の課題解決に実践的に取り組んでいくプロジェクト、「つべつ‘take action’ ミーティング」 が 30代から40代の次世代農業者を中心に立ち上がりました。コロナの影響などによる1年間の休止期間を経て、リスタートを切ったプロジェクト。農業者が主体となり政策提言をまとめるなど、活発な動きを見せています。プロジェクトリーダーの谷 智博さんと、全体の動きをまとめている鈴木 健二さん、河本 純吾さんに プロジェクトの描く津別農業の未来を伺います。

左から、お話を伺ったアシスタントマネージャー河本さん、マネージャー(プロジェクトリーダー)谷さん、サブマネージャー鈴木さん。

25年前から受け継ぐバトン。

 今回のプロジェクトが立ち上がったきっかけは?

谷 それこそ、25年前に「農業振興プロジェクト」っていうのがあったんです。その頃、災害で作物が取れなかったり、離農者が増えていったり、津別町の農業は厳しい状況が続いていて、そこで農業者を主体に議論し実践する「農業振興プロジェクト」が発足しました。5年間で今につながる様々な取り組みが行われています。津別町には複数戸法人が5個も6個もありますけど、それもその流れからですし。当時鹿の食害がひどくて農家と農協と行政でタッグを組んで鹿柵の設置を進めたのも今につながっています。その他にも様々な実践があって、そのプロジェクトがあったから 今の津別町の農業がある。当時のメンバーは今もリーダー的存在です。その人たちから「お前たちも、なんかそういうのをやってもいいんじゃないか?」って 声をかけられて集まったのが今回のプロジェクトのそもそもの始まりです。

新型コロナ蔓延防止措置が解除され、政策提言書提出に向けて開かれた全体会議。

鈴木 25年前って農業的にもすごい大変な時期で、本当に何かしなきゃいけないっていう思いが強かったと思うんですよね。それと同じものを目指せって言われたら難しいなと思ったんだけど、うちらはうちらのやり方でいっぱい発信していければいいなって。

谷 まず集まったメンバー30人くらいで、今どんな課題があるんだろうって全部洗い出していって、それをグループごとに分けていったら八つぐらいのグループに分かれるだろうなと。全部に取り組むことは難しいと思ったんで、その中の三つを選んで メンバーを配分して取り組んでいこうということで、環境整備・鳥獣害問題・6次化の三つのチームが編成されました。

グラフィックレコーダーを活用し、会議の経過を可視化したり、新しいコミュニケーションツールでグループの動きを共有するなど、プロジェクトの進行に新しい技術を積極的に取り入れている。

農業者が主体で、自分ごととして発信を!

 再スタートをきった思いは?

鈴木 1回か2回会議した頃に、もうコロナでほとんどやれなくなったんですよね。1年間ストップして再度11月にスタートするってなって、さあどうしようと。当初は農協が主体だったんですけど、それだと任せっきりで自分たちが中々動けない。このやり方のままでは進まないのかもなって俺自身が迷ってました。

河本 農協や行政が主体になってしまうと 自分ごととして捉えられない感じなのかなって。これってさ、やっぱり農家が自分たちで行動を起こして、それに対してサポートしてくれる形じゃないと動かないよって話をしたんですよね。それで自分たち主体で発信していったり、動いていこうっていう決意をしたんです。

鈴木 全部自分たちで決めてやってみようって迷いが吹っ切れて、そこからの動きが充実しているというか、活発になりましたね。

6次化チームの会議。人材育成の課題から6次化まで、現状を掘り下げ、課題解決に向けた議論が深まる。

各チームのリーダーがそれぞれのチームを進行し、まとめている。それぞれのチームが主体的に動いていくのを、マネージャーの鈴木さんたちは見守る。

経営者に近い立場になった仲間たちと語り合える場ができた。

鈴木 20代、30代前半くらいの青年部の頃は集まっていろんな取り組みをしているとは思うんですけど、それとはやっぱり取り組んでいることが一歩違うというか。40代って特に自分たちの家の仕事をみたいな状況だったので、仲間とまた改めて集まって問題に取り組む。元々仲間だけど、もっと深くそういう話ができる場ができただけでもいろんな発見があったかなって。

河本 家の仕事が忙しくて仲間といろいろな活動もできなくなって、みんな自分たちの仕事を一生懸命やって 経営者に近い立場になって。ある程度周りが見えてきた中で、それぞれの課題もありつつ再び集まれたことがすごく嬉しかったですね。

全体会議の後、さっと集まり打ち合わせをするチーム。3つのグループに分かれることで動きやすくなった。

アドバイザーである東山 寛さん(北海道大学農学部教授)の講義から、“行動する”をキーワードにプロジェクト名が考案された。

津別農業を未来へつなぐ。

 これから政策提言を出されると伺いました。

河本 それぞれのチームで個々に結構動いてたんだけど、どっかで足並み揃えたいなっていう部分があって。アドバイザーの東山先生が「提言書作りたいよな」って言っていたのが、ちゃんとその課題に対してどういうふうに動いて、どんな形で訴えていくか。自分たちに何ができるのか資料として作って、それをもとに動くことが大事っていうことなのかなって。今は大きな会議もできないから、まずはそれをやろうと。

鈴木 活動する中でまた新たに出てくるものは、その時にまとめて出してもいいだろうし。今、みんなが議論して人と会って、実際に動いているんですけど、とりあえず1回目の節目として。活動は3年をメドと言われてますが、僕らは終わらないなとは思っています。終わらしたくないなっていう感じかな。

2022年4月15日 つべつ‘take action’ミーティングの政策提言書が関連機関に配布され、町長をはじめ 提言の実践に向けて連携を求める機関へ4月18日に手渡された。

河本 課題解決に向けて自分たちが動くっていう土台づくりを一生懸命しようという流れなのかな。天候の急変だったり、突拍子もないことが起きても、現場の人間が対応しなくちゃならないんですよね。そんな時にみんなでパッと集まって、考えて、行動してっていうスピーディーな動きができるような体制をずっと更新しながらやれる、そういう未来になってほしいなと思っています。

鈴木 引き継がれればいいですよね。まだ自分たちも最前線でやりたいけど。次の世代の人が見てくれて、俺もってなってくれれば。今があるのは本当に25年前があるからだし、次の世代に また、あの時‘take action’の活動があったから今の農業があるんだな と思ってもらえる、そんなふうにつなげていけたら嬉しいです。

つべつ ‘take action’ ミーティング

2020年12月に発足。津別町の30 代〜40代の次世代農業者が集まり、津別農業の課題解決に向けたプロジェクトとして活動を開始する。コロナの影響もあり、ほぼ1年間の活動休止後、2021年11月に再スタート。農業者を含め、まちづくりに関わる新たな仲間も加え、環境整備・鳥獣害問題・人材育成6次化 の3つのチーム編成で課題解決に向けて実践をしていく。2022年4月15日に実践の基軸となる政策提言書を関連機関に配布する。

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【取材・編集】小塚翔子(こつか しょうこ)

1983年生まれ、茨城県出身。富良野塾で脚本を学ぶ。
NHKサービスセンター、ポニーキャニオンエンタープライズ勤務を経て
日本語教師として日本語教育に携わる。
東京で脚本、エッセイの連載等を手がけ、
2020年に津別町の地域おこし協力隊に着任。
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