こだわりの珈琲がつなぐ人と人

生まれも育ちも津別町。通称、「先生」で慕われている幾島広樹さん。自家焙煎珈琲専門店「幾島珈琲研究所」を立ち上げ、現在はコワーキングスペース・ジンバで喫茶店も営んでいます。こだわりの幾島珈琲と幾島広樹さんの魅力に迫ります。

うちの珈琲のこだわりは焙煎日を明らかにすること。

 自家焙煎珈琲を始められたきっかけは?

本物の珈琲にとりつかれて、美味しい珈琲を飲むためにどうしたらいいかって考えてね。売っている珈琲は賞味期限は書いてあるんだけど、いつ焙煎したかは書いてないんだよ。よく見たら1年ぐらい賞味期限があったりして。そんなはずない。どんな管理しても珈琲は一週間で劣化するから。それだったら自分で焙煎するしかないって、自分でやりはじめたのが自家焙煎のスタート。うちの珈琲の一番のこだわりは焙煎日を明らかにすること。未だに焙煎日を表示してる珈琲ってゼロじゃないけど、まずないよね。

 幾島珈琲研究所を立ち上げられたのは?

最初は自分や家族のために美味しい珈琲を作ることだけを考えてた。研究していると、本当に自分の珈琲が美味しいか気になるでしょ。だから職場の人にふるまったり、家族も意見を言ってくれて。親しい人にも「ちょっと珈琲焼いたんだけど」ってわたしていたら、そのうちお金を払っても焼いてほしいって人が増えだしたのさ。広がってってね。その気になって、販売許可をとって立ち上げたのが幾島珈琲研究所。

自宅で始めた幾島珈琲研究所。豆の焙煎と販売を行っている。

自然をどう生かすかが、ローカルな生活の楽しみ。

 雪冷え珈琲、うっとりする香りですね。

天然の雪の中で生の豆を熟成させる。雪の中で寝かせると野菜も甘い成分を出して自分の体を守ろうとするんだよ。珈琲もそういう美味しい成分を出すんじゃないかって試してみたら、ドンピシャだった。時間も手間もかかるよ。でも、津別のいいもの、自然をどう生かしていくかが楽しみ。春は津別の白樺樹液で淹れたバーチウォーター珈琲。崖をよじのぼりながら、樹液を分けてもらってね。そういうことが、みんな楽しい。まだまだ挑戦したいアイディアはいっぱいあるんだ。

雪の中で熟成させた雪冷え珈琲。独特のまろやかな香りがする。

店は旧交を温めたり、新しい仲間と出会うところ。

 今、ジンバで喫茶店もされてますね。どんなお客さんが来ますか?

津別の人が中心だね。幼馴染みとか元同僚や教え子も来る。一週間で同級生が一人も来ないっていうことはないかな。50年前の言葉遣いに戻って、俺、お前になっちゃう。そんな旧交を温めたり、新しい仲間や初めて会う人でも、この場所が人と人をつなぐ接点、中継点になっていってる。

コワーキングスペースジンバの一角にオープンしたカフェ。津別町や近隣の町からも人が訪れる。

教員時代、子どもと関われたのは 僕の人生にとって最高だった。

 幾島さんは先生をされていたんですよね?

中学の音楽教諭で根室管内、釧路。その後は校長や教頭の管理職でオホーツク管内全域を回って。定年後も町で相談員とかを頼まれて、教育にずっと携わっていたね。子どもと関わったのはすごい充実して、僕の人生にとっては最高だった。子どもと内面でしゃべることには自信があったね。だからじゃないけど、今でもお客さんが悩みとかをね、自然と話してくれたりする。

 音楽の先生。楽器は何をされていたんですか?

トランペット。中学1年から吹奏楽をやってた。本当に好きだったね。今 充実しているけど、わがままを言うなら 夢はクラシック喫茶かな。

津別は人の気持ちがあったかい町。

 生まれ育った津別町の好きなところは?

人情、人の良さみたいのがあるね。北海道の人は最初とっつきづらいんだけど、一回距離が縮まると凄い親切にしてくれるんだ。困っているとちゃんと面倒を見てくれる。北海道でも土地によって気質が違うけど、津別は特に北海道らしい、おせっかいな気質が強いかな。この町には磨けば光る石がいっぱいある。今、若い人達が頑張っているけど、発掘して光らせていってほしいね。

幾島  広樹(いくしま  ひろき)さん

1953年 津別町生まれ。教員を退職後、幾島珈琲研究所を立ち上げる。
取材当時コワーキングスペース・ジンバにて喫茶店も営業。
現在は幾島珈琲研究所の販売及び、道の駅あいおいにて土日祝日出店。
幾島珈琲研究所:〒092-0206 北海道網走郡津別町字活汲813-15 TEL 0152-76-2707
道の駅あいおい 〒092-0361 北海道網走郡津別町字相生83-1

【取材・編集】 小塚 翔子(こつか  しょうこ)
1983年生まれ、茨城県出身。富良野塾で脚本を学ぶ。
東京で舞台やラジオドラマの脚本、エッセイの連載等を手がける。
2020年に津別町の地域おこし協力隊に着任。
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